顧問契約している税理士がミスをしたことにより、会社が何らかのダメージを受けるケースがあります。例えば、決算の数字が間違っており、税務調査の結果、追徴課税が課されるケースなどです。この場合、責任の所在はどうなるのでしょうか。また、税理士に非がある場合、損害請求はできるのでしょうか。
ここでは、税理士がミスをしたときの責任の所在について、損害請求の可否をケースごとにご紹介します。
目次
税理士がミスをした場合、損害賠償が可能なケースと不可能なケースがあります。ここでは、両方のケースについて解説します。
税理士がミスをした場合、そのミスが依頼者に損害を与えるものであった場合は、損害賠償請求が可能です。具体的には以下のようなケースが考えられます。
税理士が必要な届出を出さなかった結果、依頼者が還付を受けられないなどの損害を受けた場合、税理士に対する損害賠償請求が可能です。例えば、消費税課税事業者の選択などがこれに該当します。税理士は依頼者の代わりに、これらの届出を行う責任があります。
税理士が計算ミスをしたり、申告書の別表4に入れるべき事項を入れていなかったりした場合、これは明らかな申告ミスであり、税理士の責任といえます。このようなミスにより依頼者が税金の追徴や罰金などの損害を受けた場合、税理士に対する損害賠償請求が可能です。
税理士が依頼者の同意なしに独自の判断で申告をしてしまった場合、これは税理士の過失といえます。本来、納税義務は税理士ではなく、会社や個人にあるものです。そのため、税理士が勝手に申告をしたと言われても仕方がないでしょう。ただし、このようなケースでも、依頼者が損害を受けた場合は、税理士に対する損害賠償請求が可能です。
以下のようなケースでは、税理士への損害賠償請求が難しい場合もあります。
税理士のミスが小さなもので、その結果生じた損害が少額である場合、訴訟を起こすコストのほうが高くなることもあります。このような場合は、訴訟を起こすよりも税理士と話し合いで解決するほうが良い結果をもたらす可能性が高いでしょう。
依頼者が税理士と一緒にリスクを承知した上でグレーな処理を行った場合、その結果生じた損害について税理士に責任を問えないでしょう。依頼者自身がリスクを理解し、その上で処理を行うことを同意していた場合、結果に対する責任は依頼者にあるためです。
依頼者が税理士に重要な情報を伝えていなかった場合、その結果として生じた損害について税理士に責任を問うことは難しいです。税理士は依頼者から提供された情報に基づいて作業を行うため、その情報が不十分であった場合、その結果に対する責任は依頼者にあります。
以上のようなケースが考えられますが、個々の状況により異なるため、具体的なアドバイスを得るためには、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。また、税理士との契約を結ぶ際には、損害が生じた場合の対処についてあらかじめ確認しておくことが望ましいでしょう。
実際に税理士へ損害賠償請求を行う場合、いくつかの準備が必要です。以下で、準備すべき内容を確認しておきましょう。
まず税理士がどのようなミスをしたのか、そのミスがどのような損害をもたらしたのかを具体的に把握することが必要です。税理士とのコミュニケーションの記録、契約書、申告書、領収書などの文書を集め、事実関係を明確にしなくてはなりません。
また、税理士との契約内容や、そのミスが発生した時期なども詳細に記録しておくことが重要です。これらの情報は、後の手続きで重要な証拠となります。
事実関係を整理したら、次に税務や税理士賠償責任に詳しい弁護士などに相談するのがおすすめです。専門家は具体的な状況に応じたアドバイスを提供してくれます。
また、税理士に対する損害賠償請求の手続きや、必要な書類の準備方法などについても指導してくれるでしょう。
実際に損害が生じている場合、現時点で損害の回復措置がとれないかを検討する必要があります。例えば、過大申告などの場合は更正の請求を行うことが可能です。
また、税理士のミスにより過少申告が生じた場合、税務調査前に修正申告を行うことで、加算税の発生を防止できます。
税理士が損害賠償請求を受けた場合、税理士が加入している税賠保険会社に連絡することがあります。ただし、税賠保険会社から保険金の支給が難しいとの回答を受けた場合でも、交渉により支給が可能となるケースもあるでしょう。
そのため、税賠保険会社からの最初の回答を絶対的なものと考えず、必要であれば専門家と一緒に交渉を進めることが重要です。
税理士のミスによって、会社がダメージを受け、損害請求を行う事態になることは避けたいところでしょう。ここでは、ミスの多い税理士と顧問契約を継続するおもなリスクをご紹介します。
本来、税理士は経営のパートナーであり、数字のプロです。そのため、ミスが多いという事実は、依頼者にとって大きな不安をもたらします。信頼関係が損なわれると、依頼者は税理士のアドバイスを信じられなくなり、経営判断に影響を及ぼす可能性が高いです。
また、税理士のミスが繰り返されると、依頼者は税理士に対する信頼を失い、新たな税理士を探す必要が出てくるかもしれません。これにより、余計な時間とコストも発生します。
税理士のミスにより、税金の計算や申告が誤って行われると、それが経営に大きな影響を及ぼす可能性があるでしょう。例えば、税理士が納税予測を見誤った場合、思いがけない出費が発生し、資金繰りに苦しむことになるかもしれません。
また、税理士のミスにより税務調査が行われ、罰金や追徴税が課されると、それが企業の財務状況に大きなダメージを与える可能性もあります。
税理士のミスが依頼者に損害を与えた場合、依頼者は税理士に対して損害賠償請求を行うことが可能です。しかし、損害賠償請求の手続きは複雑で時間とコストがかかります。
また、訴訟に至った場合、その結果は必ずしも依頼者が望むものとは限りません。
ミスが多い税理士は、修正や再確認に時間を取られるため、業務の遅延を引き起こす可能性があります。そのため、依頼者のビジネスに悪影響を及ぼす可能性が高いでしょう。
例えば、税理士のミスにより申告期限を逃した場合、遅延納付税が発生するかもしれません。
税理士のミスが頻発すると、依頼者だけでなく、その他のクライアントや関係者からの信用も失う場合もあります。これは、税理士のビジネスにとって大きなリスクといえるでしょう。
税理士の評判が悪化すると、新たなクライアントを獲得するのが難しくなる可能性もあります。
税理士のミスによる損害は、顧問契約している場合でも損害賠償請求が可能です。ただし、具体的なケースごとに責任の所在を検討し、専門家と相談することが欠かせません。また、ミスの多い税理士との顧問契約は信頼や経営に影響を及ぼすリスクを考慮する必要があります。したがって、ミスが多い税理士とは顧問契約を終了し、別の税理士を探すのがおすすめです。
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