病院・クリニックの世代交替を検討している場合は、事業承継について知識を習得することが大切です。事業承継とは、親族や従業員などに事業を引き継ぎ、病院・クリニックを存続させることを指します。後継者不足によって病院・クリニックの事業承継ができずにいるケースは少なくありません。今回は、病院・クリニックの事業承継の課題や選択肢、注意点などについて詳しく解説します。
目次
病院・クリニックは、院長が高齢になった際に事業承継が必要です。亡くなるまで院長を続けるのも1つの方法ですが、後継者を決めておかなければ病院・クリニックの管理系統が麻痺し、従業員や患者に大きな負担がかかる恐れがあります。これまでに築き上げてきた従業員や患者との信頼関係を損ねず、次の世代へ引き継ぐためにも、あらかじめ後継者を選定し準備を進めておくことが大切です。
病院・クリニックの事業承継では、「親族内承継」、「病院・クリニックの従業員からの選出」、「M&A」が主な選択肢となります。最適な方法を選択するためにも、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
親族内承継は、配偶者や子ども、親戚などの親族に承継する方法です。従業員や患者との信頼関係を維持しやすいため、これまで通りの経営ができるでしょう。その一方で、親族に病院・クリニックの院長に適した人物がいないケースが少なくありません。また、親族が「自分達の中から後継者を選びたい」と考えている場合は、従業員や第三者を後継者に選定すると不満の声が出る恐れがあります。
病院・クリニックに勤める医師から後継者を選出する方法があります。病院・クリニックの事情を知っている医師であれば、他の医師や看護師とのコミュニケーションや患者の対応などにも不安がないでしょう。その一方で、他の医師から不満の声が出る可能性もあります。
他の病院・クリニックの医師を後継者に選ぶのも選択肢の1つです。ただし、ある程度名の知れた医師でなければ、他の医師から不満の声が出るかもしれません。また、患者からも心配の声が出る場合があるため、少なくとも医療の質を落とさないように注意が必要です。
M&Aは、第三者に病院・クリニックを譲渡することを指します。病院・クリニックの経営に詳しい医師、あるいはそのような医師を抱える企業に譲渡することが一般的です。譲受の目的は、その地域の病院・クリニックに事業を拡大することや、多角経営による経営の安定化を図ることなどです。
M&Aであれば、後継者問題を解消できる可能性が高いでしょう。主な相談先は、M&Aの仲介会社やアドバイザリー会社、会計事務所、弁護士などですが、会計事務所がM&Aの仲介からアドバイザリーまで行うこともあります。
病院・クリニックは、後継者問題を抱えるケースが少なくありません。後継者候補がいない、親族に適任者がいない、後継者候補がいても本人に断られた、などさまざまな事情があります。病院・クリニックの後継者問題の課題について、詳しく見ていきましょう。
院長が高齢になってからでは、後継者探しは難航するでしょう。これは、高齢になればなるほどに体力が低下し、診療や経営業務に加えて後継者探しをすることが難しくなるためです。高齢になれば、大病によって急遽退任せざる得なくなったり、事故で大怪我を追ったりするリスクが高まります。
退任せざるを得ない場合、後継者がいないのであれば廃業を選択することになるでしょう。代役を立てることも可能ですが、病院・クリニックの業務に精通しており、経営のノウハウを持つ人物でなければ短期間で経営が傾く恐れがあります。
病院・クリニックの事業承継では、配偶者や子供などの親族に承継することが一般的です。しかし、親族に医師がいない場合、親族内承継は行えません。この場合、従業員や別の第三者を後継者にすることになりますが、親族から不満の声が出る可能性があります。
親族内承継ができない場合、従業員や第三者を後継者にすることになりますが、なかなか後継者候補が現れないケースが少なくありません。病院・クリニックの院長に求められる条件は次のとおりです。
これだけ多くの条件を満たす人物はなかなか見つからないのが実情です。
病院・クリニックの事業承継を成功させるには、適切なタイミングで準備を始めて信頼できる専門家のサポートを受ける必要があります。病院・クリニックの事業承継を行う際の注意点は次のとおりです。
病院・クリニックの後継者を選定後、すぐに承継するわけではありません。何年もかけて少しずつ引き継ぐとともに、経営のノウハウを伝える必要があります。院長が高齢だと、いつ病気で退任することになるかわからないため、なるべく早く準備を進めた方がいいでしょう。
M&Aを選択する際も、買い手の選定から交渉、契約まで複数の工程を踏むため、希望する承継日から逆算してスケジュールを決めることがポイントです。
M&Aを選択する際は、信頼できる専門家に相談することが大切です。M&A仲介会社やアドバイザリー会社は、多くの買い手候補を紹介できます。会計事務所は税務まで踏まえたサポートができるため、別で税理士や会計士を探す手間がかかりません。税務関連の充実したサポートを求めるのであれば、自身でM&Aに対応できる会計事務所を探すのがおすすめです。
事業承継の際は、事前に従業員や患者から理解を得ておくことが重要です。完全に理解されなくても、一定以上の理解を得ておくことで承継後に退職したり別の病院・クリニックへ移ってしまったりする事態を防げるでしょう。M&Aを選択する場合、従業員や患者数なども譲渡価額に影響するため、なるべく維持したいところではないでしょうか。
病院・クリニックの事業承継を成功させるには、自身にとって最適な方法を選択する必要があります。親族内承継が難しい場合は従業員への承継、あるいはM&Aを選択しましょう。準備を始めるのが遅くなれば、院長の高齢化が進むことで経営リスクが高まります。なるべく早い段階で準備を始めて、最適な形で事業承継できるように努めることが大切です。
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