少子高齢化による労働力不足という課題を解決する手段としてDXを推進する企業が増えています。そのような企業が有効活用したい制度が、DX投資促進税制です。ここでは、DX投資促進税制がどのような制度なのか、概要や控除額、認定要件、手続きの方法などをご紹介します。
目次
そもそもDX投資促進税制とは、どのような制度なのでしょうか。ここでは、制度の概要と対象者、適用期限を確認しておきましょう。
DX投資促進税制は、企業がデジタル技術を活用したビジネス変革に向けて行う投資に対して、税額控除や特別償却の措置を受けられる制度です。具体的には、以下のようなポイントがあります。
・情報技術適応計画:主務大臣によって認定されたDX投資促進税制の計画が必要
・税制措置:DXに必要なソフトウェアや繰延資産、器具備品、機械装置などを適用期間内に事業の用に供した場合、法人税額から最大5%の税額控除または30%の特別償却が受けられる
DX投資促進税制を受けられる対象者は、青色申告書を提出する法人であり、産業競争力強化法の認定事業適応事業者である法人です。ただし、令和4年度までの旧制度を利用した事業者は現制度を利用できません。
DX投資促進税制は、2025年3月31日まで適用されます。利用したい場合は、早めに手続きを行いましょう。(本記事を書かれたのは2024年8月です)
DX投資促進税制を活用することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、DX投資促進税制の対象支出と控除額について解説します。
DX投資促進税制の控除対象は以下のとおりです。
・ソフトウェア ・繰延資産 ・有形固定資産 |
ソフトウェアは、DXのために取得または製作したものが該当します。繰延資産はクラウド技術を活用したシステム移行費用や、DXに利用するソフトウェアにかかる費用です。また有形固定資産は、ソフトウェアや繰延資産と連携するものでなければなりません。
DX投資促進税制の活用によって、以下のような控除が受けられます。
・税額控除:3%または5% ・特別償却:30% |
どちらかを選択できますが、受けられるのは2年間です。
DX投資促進税制には、控除限度額が設定されています。具体的な条件は、以下のとおりです。
・対象資産合計額が300億円以下の場合:情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の合計額 × 3%(一定の場合は5%) ・対象資産合計額が300億円を超える場合:30,000,000,000円 ×{(情報技術事業適応設備の取得価額または事業適応繰延資産の合計額)/対象資産合計額}× 3%(一定の場合は5%) |
DX投資促進税制は、どのような要件を満たせば利用できるのでしょうか。ここでは、DX投資促進税制の認定要件をご紹介します。
情報技術適応に関する計画(事業適応計画)の実施期間が10年以内であることが、DX投資促進税制を利用する要件の1つです。ただし、目標達成の翌年以降は、報告義務が免除されます。
DX投資促進税制を利用する場合、既存事業ではなく新需要の開拓にかかる事業であることも要件です。具体的には、計画期間内おいて事業適応計画による新商品、または新サービスにかかる一事業年度の売上額が、比較対象期間(おおよそコロナ前5事業年度)における全事業の売上額(連結会社の場合、連結会社全体の売上額)の平均10%以上の達成見込みである必要があります。
企業の財務が健全であることも、DX投資促進税制を利用するための要件です。計画の終了年度において、以下に挙げる財務状況の達成が見込まれなくてはなりません。
・有利子負債/CF≦10 ・経常収入>経常資質 |
計画期間の終了年度において、事業適応計画による新商品・新サービスの売上のうち、25~50%を海外売上が占めることが見込まれる必要があります。また、クラウドを活用し既存データを、以下のどちらかのデータと連携し有効活用することも要件です。
・グループ内外の会社・個人が所有するデータ ・センサーなどで新規取得するデータ |
実施予定の事業適応計画が、取締役会などの組織的な判断に基づいていることも、DX投資促進税制を利用するためには不可欠です。
DX投資促進税制を利用するためには、これまでの要件に加えて以下の要件も満たさなくてはなりません。具体的な内容を確認しておきましょう。
1.2022年12月1日以降に「DX認定」の取得。更新を行っていること 2.以前にDX投資促進税制による課税の特例について確認されたことがない 3.対象となる投資額が、過去3年の国内売上高の0.1%以上であること 4.投資対象の設備が、以下に該当すること ・クラウドの構築、または必要なものであること(中古でないこと) ・貸付・産業試験研究のためのものではいこと ・ソフトウェア業、情報処理サービス業、インターネット不随サービス業のためのものでなく、国内で利用するもの 5.ハードウェアの場合、データ連携などソフトウェアとあわせて利用するものであること 6.繰越資産は、クラウド構築のためであること |
DX投資促進税制を利用するためには、さらにデジタル(D)要件と、企業変革(X)要件も満たす必要があります。まずデジタル(D)要件では、以下の条件を満たさなくてはなりません。
・データ連携:他社のデータや自社のデータを、センサーなどを用いて既存のデータと統合することを指す ・クラウド技術の活用:クラウド技術を活用することが求められる ・DX認定の取得:情報処理推進機構が審査するDX認定の取得には、以下の要件が必要 └レガシーシステムの新規または継続使用の回避 └高水準のサイバーセキュリティの確保 └デジタル人材の育成・確保 |
なお、デジタル(D)要件に変更はない場合でも、DX認定取得に際しては新たにデジタル人材の育成・確保も必要です。DX認定制度とは、デジタル技術の進展による社会の変化を受け、経営者が取るべき対応をまとめた「デジタルガバナンス・コード」に基づき、DX推進の準備が整っていると判断された企業を認定する制度です。そのため、以前に認定を受けた企業でも、認定の更新が求められます。
企業変革(X)要件は、以下のとおりです。
・全社レベルでの売上上昇が見込まれること ・成長性の高い海外市場の獲得を図ること ・全社の位置決定に基づくこと(取締役会などの決議文書の添付が必要) |
なお要件変更前は、一定の生産性や売上の上昇が期待できることが条件でしたが、改正後は企業全体で売上が上昇する見込みがあることに変更されました。さらに、国内市場だけでなく、高い成長が見込まれる海外市場の獲得も新たな要件として加わった点に注意が必要です。
DX投資促進税制を実際に利用する場合には、いくつかの手続きが必要です。以下で、具体的な流れを確認しておきましょう。
DX投資促進税制を利用するためには、まず事前相談を行い、要件を確認しなくてはなりません。事業適応計画を提出し、主務大臣(経済産業大臣)から認定を受ける必要があります。
次に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)からDX認定を取得します。
認定を受けた後、投資資産(ソフトウェア、機械装置など)を導入します。税務申告書に事業適応計画の認定申請書の写しを添付して申告することが必要です。手続きには時間がかかることもあるため、早い段階で顧問税理士と相談することをおすすめします。
DX投資促進税制は、企業がデジタル技術を活用したビジネス変革を進めるための投資に対して、税額控除や特別償却の措置を受けられる制度です。対象となる法人は認定事業適応事業者で、適用期限は2025年3月31日までです。対象支出にはソフトウェア、繰延資産、有形固定資産が含まれ、控除額は最大5%の税額控除、または30%の特別償却が受けられます。利用には事前相談、認定申請、DX認定取得が必要です。DXを推進する企業は、本制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
顧問税理士を探す際には、税理士紹介ドットコムの活用をおすすめします。手数料なども一切不要で、北は北海道から南は沖縄まで、全国ご希望のエリアで税理士をご紹介することが可能です。ぜひ、お気軽にご相談ください。