会計事務所はいくらで売れる?評価額の算定方法から売るタイミングまで解説

会計事務所の売却を検討する際は、おおよその売却額をイメージしておくことが大切です。通常、企業の知名度や事業内容、業績などから評価額を算定し、最終的な交渉を経て売却額を決定します。一方、会計事務所は一般企業とは異なる方法で評価額を算定することが特徴です。また、売却のタイミングによって評価額も変化する点にも注意しましょう。

ここでは、会計事務所の評価額の算定方法から売るタイミングまで詳しく解説します。

会計事務所の評価額の算定方法

会計事務所の評価額の算定方法には、「1年間の顧問報酬」、「2~3年分の営業利益」や「時価純資産法」、「DCF法」で算定した企業価値をベースに計算する方法などがあります。それぞれの評価額の算定方法は次のとおりです。

1年間の顧問報酬

個人の会計事務所の場合は、「1年間の顧問報酬」をベースに評価額を算定するケースが多いといわれています。特に、会社ではなく個人事業として行っている場合に選択される傾向にあります。

「1年間の顧問報酬」をベースに評価額を算定する場合、例えば年間の顧問報酬が3,000万円であれば、評価額も3,000万円程度となります。ただし、在籍している税理士や公認会計士の人数、顧問先の規模・安定性など、さまざまな点を考慮して最終的な売却額を算出するため、より大きな額を提示することが多いでしょう。

2〜3年分の平均営業利益

2~3年分の平均営業利益を基準に評価額を算定する場合もあります。例えば、2年間の平均営業利益が3,000万円の場合、その2年分の6,000万円を評価額とします。この場合も在籍している税理士や公認会計士の人数や顧問先の規模・安定性などを加味して、最終的な売却額を算出するため、さらに大きな額になることが多いでしょう。

なお、1年間の顧問報酬から評価額を算定するケースと同じく、会社ではなく個人事業として行っている場合に選択される傾向にあります。

時価純資産法

時価純資産法は、純資産を時価に換算し、企業価値を算出する手法です。賃借対照表に記載がある客観的なデータに基づいて評価額を算定するため、妥当性に優れています。また、他にさまざまな書類を用いなくとも評価額を算定できるため、根拠を理解しやすい点もメリットです。

ただし、将来的に得られる見込みの収益を加味できないため、実際よりも高い・低い評価額になる可能性があります。また、帳簿の内容に誤りがある場合も評価額を正しく算定できないため、事前に十分なチェックが必要です。

時価純資産法は、株式会社の場合に選択される傾向にありますが、会計事務所の多くは個人でしょう。時価純資産法を選択するケースには、コンサルティングや記帳代行を別会社で行い、通常の会計業務を個人事業として行っている場合などが挙げられます。

DCF法

DCF法は、将来的に得られる見込みのキャッシュフローに基づき、割引率を加味して現在の価値を算出し、企業価値を算定する手法です。会計事務所の収益性、将来性、その他の要素を踏まえて評価額を算定できるため、妥当性に優れています。ただし、将来性が不透明な場合はマイナス評価をされる恐れがあります。また、時価純資産法と同様に、個人事業とは別に会社を設立している場合に選択される傾向があることを覚えておきましょう。

会計事務所を高く売るためのポイント

会計事務所の売却額には、ブランド力や顧問契約数などが関係しているため、工夫次第でより大きな売却額で条件交渉できます。次のポイントを押さえることで、会計事務所を高く売却できる可能性が高まります。

顧問契約を増やす

顧問契約を増やすことで売上アップに繋がります。売上高1,000万~1億円ほどの会計事務所は、それ以下の売上高の事務所よりもM&Aが成立しやすいため、顧問契約を増やして安定的な売上を確保することを目指した方がよいでしょう。顧問契約を増やすには、既存顧客に対する営業活動に加え、新規開拓営業やマーケティングも必要になります。

一時的な売上高が大きいだけでは、将来の収益性や安定性まで加味された際に評価額が低くなる恐れがあるため、まずは顧問契約を増やすことを考えましょう。

税理士や公認会計士を必要に応じて増やす

経営リスクを抑えるために最小限の人員を維持する場合、売上高を増やすことは難しいのではないでしょうか。売上高を増やすために業務量を増やすと、人員が不足する恐れがあります。業務の性質や継続性を加味して、税理士や公認会計士を増やすことを検討した方がいいでしょう。人員不足が原因でチャンスを逃すケースも少なくないため、売上高アップと人員増加はほぼ比例するものと考えることが大切です。

事業を拡大する

単なる新規開拓や顧問契約を増やすだけではなく、記帳代行やコンサルティング、M&Aのサポートなど、事業を横に展開するのも1つの方法です。より多くの売上を確保できるうえに、安定性も高まります。また、1つの企業がジャンルの異なる事業を複数展開するのとは異なり、1人の従業員が複数事業を担当できるため、人員を雇いすぎて経営リスクが高まる懸念も小さいでしょう。

会計事務所を売却するタイミング

会計事務所を高く売却するには、そのタイミングが重要です。次のようなタイミングで売却を検討しましょう。

売上高が年々増加傾向にある

時価純資産法やDCF法で評価額を算定する場合は、売上高が年々増加傾向にあるタイミングでの売却が適しています。ただし、顧問契約や営業利益などから評価額を算定する場合でも、売上高の増加を加味できる可能性があります。いずれにしても、売上高が年々増加傾向にある会計事務所は売却額が高くなりやすいため、売却に適したタイミングと言えるでしょう。

売上高が停滞している

売上高が伸び悩んでいるタイミングも売却に適しています。ただし、将来的に得られる見込みの収益を加味すると評価額が低くなる恐れがあります。売上高が停滞している会計事務所は売却が困難と思うかもしれませんが、そのようなことはありません。特に、会計事務所が会計事務所を買収するケースでは、事業規模を拡大し相乗効果によって売上高を大きく伸ばせる可能性があるため、売上高が停滞していても買収に踏み切る場合があります。

また、売上高が停滞していることは、安定的な経営ができているとも捉えられるでしょう。

競合他社が増加している

競合他社が周辺地域に増加している場合、今後の競争が激化する可能性があります。そうなれば売上が低下して売りたいときに高く売却できなくなるでしょう。そのため、競合他社が周辺地域に増加しており、売上が低下するリスクがあると考えられる場合は、早めに売却を検討した方がよいと考えられます。ただし、周辺の個人・企業に太いパイプを持っていたり独自の強みがあったりする場合は、競合他社が増加しても売上は低下しづらいでしょう。

会計事務所はベストなタイミングで売却しよう

会計事務所の評価額は、「1年間の顧問報酬」、「2~3年分の営業利益」や「時価純資産法」、「DCF法」などで算定することがほとんどです。いずれの場合も現在の売上高が加味されるため、売上高が高く推移しているタイミングで売却を検討しましょう。売却のタイミングを誤ると、実際の価値よりも売却額が低くなる恐れがあります。

今回、解説した会計事務所の評価額の算定方法や売却のタイミングを踏まえて、より良い形で売却することを目指しましょう。

この記事の著者

加藤良大

歴10年フリーライター。執筆実績は2万本以上。M&A、税務、法律、不動産など専 門的なジャンルの記事を数多く執筆。監修する専門家、クライアントから高評価 を得ている。

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