経理・税務業務は、いまだに多くの企業においてアナログな業務が残っているのは現状です。少子高齢化の影響により、労働人口が減少傾向にある日本企業においては、業務効率化による生産性向上が重要な課題といえます。
そのため、経理・税務DXを推進する企業が増加傾向です。ここでは行う効率化につながる経理・税務DXがどのような取り組みなのかについて、実施するメリットや活用したいITツールなどを併せて解説します。
経理・税務DXと言われても、どのような取り組みなのかについて詳しくご存じの方は少ないかもしれません。ここでは、DXの概要や経理・税務DXの概要、および注目されている背景について解説します。
DXとは「Digital Transformation」の略語で、データとデジタル技術を使ってビジネスモデルそのものを変革したり生み出したりする取り組みをさします。一方、デジタル化は、ITシステムやツールの活用によって業務の負荷を軽減することや、効率性を高め生産性アップにつなげることが主たる目的です。
DXは、デジタル化したビジネスモデルを用いて、社内のみならず社会制度や組織文化も変化させていくという概念のため、デジタル化とは異なります。
経理・税務DXとは従来の業務方法を変革し、自動化・効率化を図ることを意味します。税務業務においても、ITテクノロジーを活用し、新規ビジネスの創出や業務プロセスの再構築による最適化を図っていくDXが、多くの企業において重要な経営課題として認識されている状況です。
企業における経理・税務DXは、税務を含む業務全般に対してITテクノロジーを活用し、より高度な業務を遂行することが可能になります。DX化によって、単に伝統的な税務業務の効率化だけではなくデータを活用したアウトプットや、税務人材のデジタルスキルのレベルアップといった効果も期待できる点がメリットです。
経理・税務DXが注目されている理由は、デジタル技術の進化によって実現が容易になったことが挙げられます。また、日本企業全体においては、経理業務のデジタル化が遅れていることも想定されるでしょう。
手作業や紙ベースのプロセスをデジタル化・DX化することにより、業務の効率化とコスト削減を実現できる可能性が高まります。経理・税務業務の正確性やスピード化が求められていることも、DXの推進が求められる大きな理由です。
人手不足の企業が多い中、経理業務において正確性が欠かせません。経理業務にスピード感がない場合、ビジネスの停滞が起こりかねなません。デジタル化されたデータは正確性が高いうえに、リアルタイムで利用しやすいというメリットがあります。
また、AIによる帳票の自動認識や異常検知などは、手作業に比べて高速かつ正確であり、労力の削減や人的ミスの軽減が期待できるでしょう。
経理・税務DXを推進することで、経理部門における業務効率化の実現が可能です。また正確性の向上により、ミスが減少しコスト削減にもつながります。さらにペーパーレス化による環境負荷の軽減や業務効率化、データ分析による経営戦略の改善効果も得られるでしょう。
経理・税務DXを推進することによって、企業が得られるメリットは以下のとおりです。
経理・税務業務の自動化やデジタル化により、従来の手作業による業務を効率化することが可能です。例えば、請求書の自動作成や入力作業の自動化、経費精算の自動化などが挙げられます。
これにより従来は時間がかかっていた業務を短縮でき、社員の負担軽減や生産性向上につながるでしょう。
経理・税務DXを実現することで、業務の生産性が向上し、人手不足に陥ることが少なくなる点もメリットです。また、デジタル化によってムダな手間を省き、創造性の高い価値ある業務を行えるようになります。
例えば、電子帳簿保存法に則った対応ができていなくても、法令に準拠した税務処理業務が可能になるサービスもあるため、有効活用したいところです。
経理・税務DXによって、業務の自動化や効率化が進み、人的・金銭的コストの削減が期待できます。例えば紙の印刷代や郵送費、保管スペースなどの金銭的コストも削減することが可能です。
また、業務にかかる時間を削減することで担当者の時間を確保できれば、空いた時間を人にしかできない分析や、経営判断に役立つ指標提供へ充てられるようになります。
経理・税務DXを推進することでペーパーレス化を実現することにより、業務の効率化や書類にかかるコスト削減、書類の保管スペース削減、検索性の向上、セキュリティリスクの軽減など、さまざまなメリットが得られます。
ペーパーレス化によって、紙で資料を作成・保管するときの費用を抑えることが可能です。また、資料の郵送費やプリンターのメンテナンス費用、廃棄費用といったコスト削減も見込めるでしょう。
さらに書類を電子データとして保存すると、検索項目を設定することにより、欲しい書類を簡単に探せるようになります。その結果、経理・税務業務で扱う書類も電子保存しやすくなる点がメリットです。
経理部門がデータを収集・分析することにより、企業の経営戦略の改善につなげることが可能です。例えば、経理部門が財務データを分析することで、企業の収益性やキャッシュフローなどの状況を把握し、経営戦略の改善を実現できます。
また経理部門がデータ分析を行うことで、コスト削減や業務効率化などの課題解決にもつながるでしょう。
以下のツールを組み合わせて利用することで、経理・税務業務の効率化、データの精度向上、意思決定の質の向上といった目標を達成することに役立ちます。
・会計ソフト ・ERPソフト ・経費精算システム ・RPA ・データ分析ツール ・電子契約システム ・クラウドストレージと共有ツール |
ただしツールの選定と導入については、企業のニーズや戦略に合わせて検討することが重要です。ここでは、それぞれのツールがどのようなものなのかを確認しておきましょう。
会計ソフトとは経理業務を効率化し、繰り返しのタスクやデータ入力の自動化を可能にするITツールです。
企業や個人が収入、支出、資産、負債などの財務データを効率的に管理したり、帳簿を作成したりすることをはじめ、税務申告や財務分析を行う際に利用されます。ヒューマンエラーを減少させ、精度を向上させるだけでなく、時間とリソースを節約する効果を期待できる点が特徴です。
主要な会計ソフトとしては、弥生会計やマネーフォワードクラウド、freeeなどが挙げられます。会計ソフトの詳細は、以下の記事も併せてご確認ください。
ERPシステムは、経理だけでなく企業全体の業務プロセスを統合管理するためのITツールです。財務や人事、生産などの情報を一元管理し、データの一貫性と可視性を実現します。
代表的なERPシステムは、Microsoft Dynamics 365 Business Central、マネーフォワード クラウドERP、GRANDITなどです。
従業員の経費処理を効率化するためのITツールです。電子的な経費申請、承認、精算のプロセスを自動化し、紙の書類作成と処理を削減します。
代表的なツールとしては、楽々精算やジョブカン経費精算、Concur Expenseなどがあります。
RPAとは、ヒトがパソコンで行う定型作業をソフトウェアロボットの活用によって、効率化・自動化を実現するITツールです。Excelでの表計算や、eメールの自動作成・送信といった業務を自動化できるため、従業員の負荷軽減やヒューマンエラーの防止効果が期待できます。
WinActor、Power Automate Desktop、ロボパットDXなどが、代表的なRPAです。
データ分析ツールは経理データを可視化し、洞察を得るためのITツールです。経理データから傾向やパターンを抽出し、戦略的な意思決定に役立てられます。
TableauやPower BI、Yellowfinなどが、代表的なデータ分析ツールといえるでしょう。
契約管理をデジタル化するITツールで、契約書の作成、署名、管理を効率化が期待できます。また、契約の期限管理や自動通知などによるサポートの実施も可能です。
代表的な電子契約システムは【クラウドサイン】クラウド型電子契約やDocuSign、Adobe Signなどが挙げられます。
クラウドストレージ(例: Google Drive、Dropboxなど)や共有ツール(例: Microsoft Teams、Slackなど)を組み合わせて使用することにより、経理部門内での文書共有や従業員同士の共同作業を実現することが可能です。また、自社にオンプレミスのサーバーを設置する必要がないため、初期やランニングの費用を圧縮できます。
経理・税務DXを進めたいと思っている場合でも、具体的に何から手をつけるべきかわからない方も多いでしょう。ここでは、経理・税務DXを実現するための一般的な手順をご紹介します。
まず、DXで実現したい業務のあるべき姿を考えることが必要です。例えば、経理部門がどのような状態になればDXが実現したかを明確にする必要があります。
具体的には、以下のように目標を設定するとよいでしょう。
・●●までに、紙ベースの業務をゼロにする ・●●までに、業務の自動化率を○○%にする ・決算期間を△△日短縮する |
次に、業務の電子化と合わせて業務自体や業務プロセスを見直す必要があります。
電子化によってどのような業務改善ができるかを検討しましょう。例えば、以下のような改善効果が期待できます。
・紙ベースの業務を電子化することによって、業務効率が向上する ・業務の自動化によって、人的ミスや手違いが減り精度が向上する |
最後に、データの活用によってどのような業務改善ができるかを検討します。
例えば、以下のような効果が期待できるでしょう。
・経理部門自身も含めた全社的な課題抽出や解決策提案が可能となる ・データ連携によって、他部署との情報共有や連携がスムーズに行える |
漠然と収集だけを行うことを避けるため、事前に目的を達成するためには、どのようなデータが必要なのかを明確化しなくてはいけません。
従来の業務方法を変革することによって、自動化・効率化を図る取り組みが経理・税務DXです。経理・税務DXを実現した企業は、以下のようなメリットが得られます。
・業務効率化の実現 ・経理・税務業務における正確性の向上 ・コスト削減 ・ペーパーレス化の実現 ・データ分析による経営戦略の改善 |
また、経理・税務DXを実現しやすくするITツールもさまざまあるため、有効活用したいところです。なお、業務DXを推進する際には、税理士への相談も欠かせません。どのようにDXを推進するべきか相談しつつ、プロジェクトを推進しましょう。
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