会計事務所の後継者不足の現状は?放置した場合に起こり得る問題と解決策

会計事務所の代表者から退任し、後継者に事務所を任せたいと考えているものの、適任者がおらず悩んでいる方は多いでしょう。また、後継者がいないのを仕方ないと考え、放置している方もいます。この場合、さまざまな問題が起こり得るため、後継者探しのポイントや解決法をチェックして、いち早く行動を始めることが大切です。今回は、会計事務所の後継者不足の現状と、問題を放置した場合に起こり得ること、後継者不足の解決策について解説します。

会計事務所の後継者不足の現状

日本税理士会連合会が行った「第6回税理士実態調査」によると、税理士の年齢割合は以下のとおりです。

  • 20代……0.6%
  • 30代……10.3%
  • 40代……17.1%
  • 50代……17.8%
  • 60代……30.1%
  • 70代……13.3%
  • 80代……10.4%

上記のように、50代以上の税理士が全体の71.6%を占めます。税理士は高齢化が進行しているため、後継者を探すことは容易ではありません。20代の税理士を後継者とするのも選択肢の1つですが、経験不足や経営ノウハウの不足などが懸念されます。そうなれば、30~40代の税理士を選ぶのが最適解と考えられますが、全体の27.4%しか存在しないため、その中から会計事務所の後継者を選出することは困難でしょう。

会計事務所の後継者不足を放置する問題点

会計事務所の後継者不足をやむを得ず放置する人も少なくありません。しかし、解決策はいくつかあるため、なるべく早く行動に移したほうがいいでしょう。また、後継者不足を放置することの問題点を確認しておき、早く探すべき理由を認識することも大切です。会計事務所の後継者不足を放置することには、次のような問題があります。

急な廃業に追い込まれる恐れがある

後継者不在の状況で代表者が病気で倒れてしまえば、業務が著しく滞る恐れがあります。後継者がいる場合、一時的に経営を任せることで顧客との関係を維持できるでしょう。高齢になればなるほどにさまざまな病気のリスクが上がるほか、事故によって大けがをする可能性も高まります。

生涯現役を目指すのも1つの方法ですが、それ相応のリスクがあることを認識しておきましょう。

サービスの質が低下する恐れがある

高齢になると、新しい知識を得る意欲が低下したり病気しがちになったりして、顧問先に提供するサービスの質が低下する恐れがあります。そうなれば顧問先に迷惑がかかり、契約を解除されるリスクが高まります。

従業員を一斉解雇することになるリスクがある

代表者が病気で倒れ、急遽引退することになった場合は、やむを得ず廃業を選択することになるでしょう。そうなれば従業員を一斉解雇することになります。従業員とその家族が路頭に迷うことはなるべく避けたいと考える人が多いのではないでしょうか。

後継者がいれば、これまで通りに会計事務所の経営を続けられるため、従業員に大きな負担がかかる心配がありません。

会計事務所の後継者に相応しい人物とは

後継者をなるべく早く見つけたいからといって、信頼性が低い人物を後継者に選ぶことはおすすめできません。会計事務所の後継者に相応しい人物を見つけ、打診しましょう。会計事務所の後継者に相応しい人物の条件は次のとおりです。

  • 税理士や公認会計士
  • 経営者の素養がある
  • 知識やスキルに申し分ない
  • 従業員と良い関係を築ける
  • 顧問先に安心して紹介できる

会計事務所の代表者は、やはり税理士や公認会計士でなければ質の高いサービスを提供できません。また、どれだけスキルや知識を持っていても、経営者の素養がなければ後継者に選ぶことは難しいでしょう。さらに、従業員と良い関係を築けることも必須です。これら全てを踏まえ、安心して後継者として選べる人物を見つける必要があります。

なお、育てることで後継者に足る人物に成長する可能性も踏まえ、適任者を探すことが大切です。

会計事務所の経営者を退任する際の選択肢

会計事務所の経営者から退任する際は、何らかの形で後継者を見つける必要があります。親族内承継と親族外承継、M&Aそれぞれの特徴やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。

親族内承継

親族内承継は、配偶者や子ども、親戚などに承継することです。経営者の血縁者が後継者であれば、従業員や顧問先から不満の声が出にくいでしょう。会計事務所は親族内承継を選択するケースが多いのですが、経営者に向かない人物に承継することで経営が悪化する恐れがあるため、絶対に親族内承継を選ぶべきとの考えは改めた方がよいと言えます。

親族外承継

親族外承継とは、親族以外の人物に事業を引き継ぐことです。後継者候補は、従業員や他社から招いた人物などです。ちなみにM&Aも親族外承継の1つで、買い手側が用意した人物や代表者などが会計事務所の後継者候補となります。親族外承継で従業員を後継者にする場合、他の従業員がよく知っている人物であることで反感が生まれにくくなります。その一方で、後継者として育成する途中に退職するリスクもあるため、後継者の選定には慎重になるべきでしょう。

また、経営者から退任後に悠々自適の隠居生活や新たな事業の立ち上げを考えている場合、従業員に譲渡の対価を支払う資力があるかどうかが焦点となります。多額の借入の個人保証をしている場合、それも後継者に引き継ぐことになる点にも注意しましょう。

さらに、親族から反感を買うリスクがあるため、事前に十分な話し合いをしておくこともポイントです。

M&A

M&Aは、第三者に会計事務所を譲渡する方法です。譲渡の対価として、会計事務所の売上や従業員、取引先などに基づいた現金を受け取ることができます。将来、得られる利益や成長性なども加味されるため、高値で売却できる可能性もあるでしょう。

また、譲渡先に個人保証を引き継ぐため、事業のための借金の保証人をやめることができます。さらに、大手の傘下に入ることで、経営の安定化や従業員の雇用維持・待遇改善なども実現可能です。中でも知名度と信頼性が高い大手の会計事務所の傘下に入れば、顧問先からの信頼アップも期待できます。

利益以外も考慮して最適な方法を選ぼう

会計事務所の代表者は50代以上が多く、後継者に適した年齢層の税理士が少ないため、後継者不足に悩む事務所が多いでしょう。後継者問題を放置すれば、急な病気で事業継続が難しくなり、従業員の一斉解雇や顧問先との契約解除などが必要になる恐れがあります。そのような自体を防ぐためにも、今回紹介した3つの選択肢の中から、最適な方法を選ぶことが大切です。M&Aのサポートを行っている税理士であれば、会計事務所の後継者不足や事業内容などの事情に精通しているため、より充実したアドバイスやサポートが期待できます。

信頼できる税理士を探したい、M&Aのサポート実績が豊富な税理士に相談したい方は、税理士紹介ドットコムをご活用ください。

この記事の著者

加藤良大

歴10年フリーライター。執筆実績は2万本以上。M&A、税務、法律、不動産など専 門的なジャンルの記事を数多く執筆。監修する専門家、クライアントから高評価 を得ている。

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