建設業は業務が複雑なことから、ほかの業種に比べ経理業務も煩雑な点が特徴です。そのため、建設業の業務や税制などに詳しい税理士に依頼しなければ、適切に経理業務が行えない可能性があります。
しかし、建設業に強い税理士を探したいと思っても、具体的にどうしたらよいかわからないという方も多いでしょう。そこで今回は、建設業に強い弁護士が必要な理由や、探すときのポイントについて解説します。
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建設業は業務内容が多種多様なため、仕事の流れが複雑な点が特徴です。また建設業は、土木・建築という2つの一式工事と、大工工事や内装工事、とび、鉄筋工事など、27種類の工事に分類されており、それぞれ会計処理が異なります。
さらに、建設業の業務フローは、案件を受託してから工事が完了するまでにたくさんの工程があり、かつ多くの業者が関わり長期間にわたって業務を行わなくてはいけないため、全体の把握が困難です。
したがって、建設業の知見がある税理士に依頼することで、細分化し複雑な経理・会計業務をサポートしてもらう必要があります。
建設業では建設業会計と呼ばれる、業界独自の会計処理が適用される点が特徴です。そのため、通常の企業会計原則に、業界独自の事情を鑑みた会計基準が取り入れられた建築業会計を利用する必要があります。「建設業経理事務士」と呼ばれる国土交通大臣の登録資格が設けられているのは、これが理由です。
また建設業では、事前に許可をとっておかなければ仕事ができないケースがあります。よって、業務上必要な申請などの手続きをサポートしてくれる存在がいると、業務をスムーズに進めやすくなるでしょう。
建設業を営む企業が経理、会計業務を行う際には、押さえるべきポイントがたくさんあります。建設業における、おもな税務上の注意点を確認しておきましょう。
建設業会計は、資材を仕入れて工事を着工する時点から建物を引き渡しまでの期間が非常に長いです。そのため、売り上げ計上するまでの期間も長く、完成後に多額の売り上げが計上されることになります。
これが完成工事基準と呼ばれる、建設業界独自の売り上げ計上基準です。ただし、工事着手日から引き渡し日までの期間がおおよそ1年以上ある場合や、工事請負対価がおおよそ10億円以上ある場合は、工事進行基準という呼ばれる別の基準が適用されます。
つまり、完成時の原価見積額に対して、期末ごとに工事の収益や原価の蓋然性を証明し、損益計算書に反映できる場合でなければ、工事進行基準は適用されないというわけです。建設業の経営者や社員が、こうした事情を把握していないと、最悪の場合、決算の金額を間違えてしまう可能性もあるでしょう。
建設業では業務を外注化することは日常茶飯事であるため、外注費と給与を適正に区分しなくてはいけません。外注が請負契約の場合は外注費、雇用契約の場合は給与で計上する必要があります。
外注費の場合、消費税の経費対象となり節税効果がある点がメリットです。一方、給与の場合は、毎月の源泉徴収や社会保障量の支払いが必要なことに加え、消費税の経費対象外となるため注意しましょう。
このように、建設業界では人件費が外注費か給与のどちらになるかによって、大きな影響があるため、この点も鑑みて経営を最適化しなくてはいけません。したがって、建設業に詳しい税理士と顧問契約しておくと、スムーズに業務が行えるだけでなく、節税メリットが得られる可能性もあるでしょう。
建設業を営む場合は、土建組合に加入することが一般的です。土建組合に加入することで、保険や共済の恩恵を受けられるというメリットが得られます。
ただし、毎月支払う土建組合費は、一部経費化できないものが含まれる場合があるので注意が必要です。例えば、土建組合費そのものは経費化できるが、その中に健康保険料や労災保険料が含まれる場合、そちらは経費化できません。(確定申告の際には社会保険料控除の対象になる)
経費の内訳や計上ルールを適正に把握しておかなければ、追徴課税の対象になり、収益に悪影響を与える可能性があるので要注意です。
建設業に強い税理士が業務に不可欠とわかっていても「実際にはどうやって探せばいいの?」と思う方も多いでしょう。そこで本章では、建設業に強い税理士を探すポイントを3つ紹介するので、参考にしてみてください。
1つめのポイントは、建設業界の会計知識が豊富な税理士であることです。
当然ながら、建設業界の会計に詳しい税理士に依頼しなければ、会計業務を適正化するのは難しいでしょう。建設業界における会計知識はもちろん、建設業界独特のルールや業務フローなどについても、広い知見を持っていなければ対応できません。
そのため、十分な知見を持たない税理士に業務を依頼すると、会計処理に多くの工数が発生し、抜け漏れの発生率も高くなります。建設業界の企業と顧問契約をした実績があるなど、同業界での経験豊富な税理士に依頼するようにしましょう。
建設業許可の手続きを任せられるかどうかも、建設業に強い税理士を探すときの大切なポイントです。
建設業許可は行政書士の業務領域なので、行政書士の資格を持つ税理士に依頼するか、別途行政書士に業務を依頼するなどして対応しなければいけません。ただし、建設業許可を得るためには財産的基礎が必要なので、行政書士の資格を持つ税理士であれば、先回りして必要な要件を満たすように指示してもらえるでしょう。
例えば、一般建設業の建設業許可を得るためには、直近の決算で自己資本が500万円以上必要です。こうしたルールを把握し、必要な手続きや準備ができるようにサポートしてくれる税理士に依頼できると安心です。
資金繰りのアドバイスやサポートをしてくれる税理士も、建設業を営む企業には欠かせない存在です。
事業規模が大きい建設業では、資金調達が常に重要な課題といえます。また、工事が完了し建物を受け渡すまで売上を計上できないこともあるため、新規案件などに取り組むためのキャッシュが必要になるケースも多いでしょう。
そのため、会社の経営状況を把握し、かつ建設業独自の慣例なども鑑みたうえで、資金繰りのアドバイスやサポートを適宜行ってくれる税理士だと頼もしい限りです。小さな建設業の会社の場合、社長が経営の切り盛りをするケースも多いですが、資金繰りを含めた対応を担うとコア業務に割ける時間が減るというデメリットがあります。よって、資金繰りをサポートしてくれる税理士と顧問契約することで、生産性の向上も実現できるでしょう。
また、実際に資金調達を行う際、金融機関から融資してもらえるようにサポートすることも、税理士が担う大きな役割のひとつです。
特殊な会計処理や手続きなどが必要な建設業では、確かな知見を持つ税理士に業務を依頼することで本業に集中し、生産性を上げることが大切です。今回紹介したポイントを参考に、ぜひ貴社の事業をサポートできる建設業に強い税理士を探してもらえればと思います。
なお、税理士紹介ドットコムでも、建設業に強い税理士探しのお手伝いができますので、ぜひお気軽にご利用ください。