個人事業主で事業規模が大きくなった場合や、法人成りしたときなどには、経理業務が煩雑化します。万が一、記入ミスや申告漏れなどが発覚すると、延滞税や追徴課税などが発生する可能性があるでしょう。
そのため、会計ソフトを導入して、業務効率化を実現しているケースが増えています。今回は会計ソフトの概要やメリット、デメリット、具体的なサービス事例などについて解説するので参考にしてみてください。
目次
会計ソフトとは、会計業務を効率化するためのITツールです。会計ソフトを活用することで、日々の仕訳業務をはじめ、帳簿や決算書、帳票といったさまざまな書類やデータを作成できます。そのため、大企業だけでなく、中小の会計処理や個人事業主の青色申告などにも欠かせないITツールといえるでしょう。
財務会計(株主や債権者などに対し、会社の財政状態と経営状況を明示するための会計)においては、会計ソフトを活用することで仕訳業務や帳票の出力、帳簿や決算書などが自動作成できるため、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の作成にも役立ちます。管理会計(会社が内部管理を行うための会計)では、自社の予算やプロジェクトの会計状況を部門ごとに細かくデータ化できるため、迅速な経営判断につなげることが可能です。
一方、債権・債務会計(買掛金や売掛金)においては、支払・入金予定日や買掛金・売掛金の残高の管理を徹底し、キャッシュフローを把握しやすくなります。
法人や個人事業主が会計ソフトを導入すると、さまざまなメリットが得られます。本章では、会計ソフトのおもな導入メリットを5つ紹介するので、確認しておきましょう。
会計ソフトを導入することで、経理・会計業務の効率化につながります。仕訳を入力するだけで、さまざまなデータや書類が自動作成できるため、スタッフの負荷や残業を軽減することが可能です。
会計ソフトの多くは、簿記の専門知識がない方でも比較的簡単に利用できるので、新人などに作業を任せやすくなり、業務負荷の平準化にもつながります。月末・月初など経理業務が忙しくなる時期や決算、確定申告の時期でも、会計ソフトがあれば、大幅に工数を削減できるでしょう。
ご入力や入力漏れなどのヒューマンエラーを抑制できる点も、会計ソフトを導入するメリットのひとつです。会計ソフトでは、入力した数字に矛盾が生じるとアラートが表示されたり、データ入力ができなくなったりするため、ヒューマンエラーを未然に防ぎやすくなります。
経理や会計業務は会社の数字を扱う性質上ミスが許されないため、担当するスタッフの心理的ストレスが高くなる点が課題です。しかし、会計ソフトを導入することによってヒューマンエラーの発生を抑制できるため、業務の精度が向上しスタッフの心理的ストレスの抑制にもつながるでしょう。
会計ソフトを導入することで、経営の意思決定が早くなる点も大きなメリットです。自社の経営状況をリアルタイムに把握したり、過去のデータとの比較検討がスムーズに行えたりするため、判断材料がすぐに揃い意思決定がしやすくなります。
中小企業や個人事業主の場合、税理士などに記帳代行を依頼するケースも多いと思いますが、会計ソフトを活用することで即時情報がアップデートされ、タイムリーな経営の実現が可能です。また、メジャーな会計ソフトであれば利用している税理士も多いため、業務を依頼するときもスムーズに進めやすくなるでしょう。
会計ソフトは適宜バージョンアップするため、税制の改正などがあった場合にも、迅速かつ柔軟に対応することが可能です。
自社システムや帳簿などで会計業務を行っている場合は、調査や開発などに工数を要するため、法改正にスピーディーに対応するのは困難でしょう。また、新しい税制のルールなどにスタッフが慣れていないと、ミスが発生しやすくなりますが、会計ソフトを導入すれば入力や仕訳が自動化できるため、ミスを抑制できます。
会計ソフトを提供しているベンダーのサポートが受けられる点も、はじめて導入する企業やITリテラシーの高いスタッフが少ない企業にとっては大きなメリットです。
会計ソフトの使い方に慣れていなくても、電話やチャットなどで質問することでフォローしてもらえるため、ITリテラシーの高いスタッフがいなくても安心して導入できます。ただし、サポート内容によっては、有償の場合もあるため注意が必要です。
会計ソフトを導入する際には、デメリットを認識したうえで判断しましょう。会計ソフトを導入することで発生すると思われるおもなデメリットを紹介します。
会計ソフトを利用するためには、初期費用やランニング費用が発生するため、コストが増える点はデメリットだといえるでしょう。また、ベンダー側の都合に応じて、利用料金が値上がりする可能性もあります。
そのため、会計ソフトを導入する際には、費用対効果を考慮して判断しなくてはいけません。
無料で使えるものや、お試し版などもあるので、自社の費用対効果に合うか検証してから本導入に踏み切るべきでしょう。
会計ソフトをはじめて導入する場合には、スタッフが使用方法を覚える必要がある点がデメリットです。スタッフが操作方法に慣れるまで一定期間が必要になるので、導入する際には本格的な運用に入る前のリードタイムをとっておくとよいでしょう。
ただし、最近の会計ソフトは簿記や会計の知識がない方でも、簡単に使えるようなUIになっているので、それほど大きな心配はありません。
税理士によっては、自社が導入している会計ソフトに対応できない可能性があります。税理士事務所で導入している会計ソフトと違うものである場合、使い方がわからずスムーズに対応してもらえないためです。
特に最近のクラウド型の新しい会計ソフトは、古い税理士事務所などでは対応してもらえないケースもあります。税理士に仕事を依頼する際には、どの会計ソフトに対応できるか事前に確認しておくべきでしょう。
会計ソフトは大きくクラウド型、インストール型、基幹システム型の3種類があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、確認しておきましょう。
クラウド型とは、ブラウザ経由で起動できパソコンへのインストールが不要の会計ソフトです。初期、ランニング費用が安価に済む点や、ソフトのバージョンアップが頻繁に行われるため、法改正だけでなくバグ修正やセキュリティ強化なども適宜実施される点がメリットだといえます。
またインターネット環境があれば、パソコンだけでなくスマホやタブレットでも利用できるため、場所に縛られず使える点もクラウド型会計ソフトのメリットのひとつです。
インストール型とは、自社のパソコンにインストールするタイプの会計ソフトです。自社サーバーなどが必要なタイプもあり、クラウド型に比べ導入ハードルが高い点がデメリットだといえます。また、バージョアンアップの度に更新が必要だったり、インストールできる端末が限定されたりするため、クラウド型に比べ利便性に劣る部分もあります。
ただし、常時ネット接続が不要なものもあるので、システム障害の影響を受けづらく、セキュリティ面が堅牢な点は、インストール型会計ソフトのメリットです。
基幹システム型の会計ソフトは、ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)ともいわれ、会計業務だけでなく社内のさまざまな業務を一元管理できるシステムのことです。大がかりなシステム開発が必要な反面、自社のワークフローに最適化できる点が基幹システムのメリットだといえます。
一方で、開発費とメンテナンスの費用が甚大な点や、ほかの業務への影響も鑑みる必要があるため、簡単にバージョンアップできない点が基幹システム型のデメリットです。
会計ソフトは多くのベンダーからさまざまな商品が提供されているため、どれを選んだらよいのか迷う方も多いでしょう。本章では、おすすめの会計ソフトを3本紹介するので、参考にしてみてください。
弥生会計は老舗の会計ソフトのため、利用者が非常に多い点が特徴です。そのため、税理士などに仕事を依頼する際にも、スムーズに進められるでしょう。
弥生会計は操作方法がわかりやすく、簿記や会計の知識を持たない方でも使用できる点がメリットです。また、入力や仕訳の自動化も可能なため、生産性の向上も期待できます。
なお、弥生会計については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご確認ください。
弥生会計とはどんな会計ソフトなのか?特徴や機能、メリット・デメリットを解説
freeeはクラウド型の会計ソフトなので、パソコンだけでなくスマホやタブレットを使って、移動中や会社の外部にいるときでも使用できる点が特徴です。freeeはクレジットカードや銀行の情報と連携ができることや、入力・仕訳業務の自動化が可能なため、スタッフの負荷を下げ、生産性を向上する効果が期待できます。
クラウド型会計ソフトの中では、シェアも高めなので今後もますます利用者の増加が見込まれるでしょう。
マネーフォワードクラウドもクラウド型の会計ソフトです。クラウド型なので、ネット環境さえあればどこでも利用できることはもちろん、パソコンへのインストールも不要なため、導入ハードルが低い点がメリットだといえます。
また、マネーフォワードクラウドはAIが学習する機能が付いているので、業務で使えば使うほど便利になっていく点も見逃せません。
マネーフォワードクラウドの詳細は、以下の記事でも紹介しているのでご確認ください。
マネーフォワードクラウドの特徴とは?機能やメリット・デメリットを紹介
会計ソフトを導入する場合には、以下2つの点に注意する必要があります。それぞれの注意点について確認しておきましょう。
会計ソフトにデータ入力するためには、元になる紙やPDFで発行された領収書や請求書などが必要です。よって、会計ソフトを導入したからといって「紙の領収書や請求書を保存する必要がなくなる!」ということはありません。
会計ソフトを導入した後も、紙の領収書や請求書を入力前に破棄してしまわないよう、大切に保管しておく必要があります。また、電子データとして保存した場合は、7年間の保存義務があるので、きちんと保管しておきましょう。
会計ソフトによっては、銀行との取引やクレジットカードの使用履歴の情報を連携できるものがあります。ただし、データを連携するためには、銀行がネットバンキングに対応している必要です。一方、クレジットカードの情報を取り込むためには、会計ソフトと連携しなくてはいけません。
銀行の取引履歴は、一定期間しか確認できないケースがあるため、過去の履歴もすべて見られるよう事前の調整が必要です。即日対応できない場合もあるので、早めに手続きを済ませておくことをおすすめします。
会計ソフトは経理、会計業務を効率化できるITツールです。簿記の知識がない方でも簡単に扱え、日々の入力や仕訳作業を自動化できるので、生産性の向上が期待できます。そのため、中小企業や個人事業主は会計ソフトを導入して削減したリソースを、コア業務に充てられるようになるでしょう。
また、会計ソフトに長けた税理士に依頼することで、さらなる経営や業務の効率化が可能です。税理士紹介ドットコムを活用すれば、貴社に最適な税理士を簡単に探せます。ぜひ以下のリンクからご確認ください。