近年、多くの事業者にとって必需品といえるツールの1つがパソコンです。パソコンは取得金額によって減価償却の対象となります。そのため、どのような条件が必要なのかを事前に把握しておかなくてはなりません。ここでは、パソコンの減価償却がどのような会計処理なのか、耐用年数や計算方法、事例、注意点などをご紹介します。
目次
減価償却とは、固定資産の取得価額を、その資産の使用可能期間(耐用年数)にわたって分割し、費用として計上する会計処理方法です。ここでは、減価償却の目的と原理、対象資産、重要性をご紹介します。
減価償却の主な目的は、費用収益対応の原則に基づいて適切な期間損益計算を行うことです。固定資産は長期間にわたって使用され、その価値は時間の経過とともに減少していくという考え方に基づいています。
減価償却の対象となる資産は、主に以下の3種類に分類されます。
・有形減価償却資産:建物、機械装置(パソコン含む)、車両運搬具など ・無形減価償却資産:ソフトウェア、特許権、商標権など ・生物:家畜、果樹など |
ただし、すべての固定資産が減価償却の対象となるわけではありません。例えば、土地や美術品など、時間が経過しても価値が減少しない資産は非減価償却資産として扱われます。
減価償却は、企業会計において正確な利益計算と適切な資産評価を行うために不可欠な会計処理方法です。適正な期間損益計算を可能にし、収益と費用を適切に対応できます。
企業の財務状況を、正確に把握することが可能です。
また、減価償却は法人税や所得税の計算に直接影響を与えるため、企業の税務戦略において重要な役割を果たします。さらに、資産価値の適正な評価という観点からも重要です。
貸借対照表上で資産の実際の価値を反映させることで、企業の財政状態をより正確に管理できます。
パソコンを事業用として購入した場合、会計上は「固定資産」として扱われ、減価償却の対象となります。ここでは、パソコンの減価償却がどのような会計処理なのか、耐用年数や取得額による処理の違いをご紹介します。
パソコンの法定耐用年数は以下のとおりです。
・サーバー用パソコン:5年 ・サーバー用以外のパソコン:4年 |
パソコンの取得価額によって、以下のように減価償却の処理方法が異なります。
パソコンの取得価額 | 減価償却方法 |
10万円未満 | 減価償却の必要がなく、全額を経費として計上できる |
10万円以上20万円未満 | 以下の選択肢がある ・通常の法定耐用年数で計上する ・一括償却資産として3年間で計上する ・少額減価償却資産の特例を利用する(青色申告者のみ) |
20万円以上30万円未満 | 以下の選択肢がある ・耐用年数で減価償却する ・少額減価償却資産の特例を利用する(青色申告者のみ) |
30万円以上 | 原則として耐用年数に応じた減価償却が必要 |
前項で触れたとおり、パソコンの減価償却は、取得価額が10万円以上の場合に必要です。減価償却の方法にはおもに定額法と定率法があり、パソコンの耐用年数は一般的に4年(サーバー用は5年)と定められています。ここでは、パソコンを減価償却する場合の計算方法と事例などをご紹介します。
減価償却の計算方法は、定額法と低率法の2種類です。
定額法とは、毎年同じ金額を償却する方法、計算式は以下のとおりです。
減価償却費=取得価額÷耐用年数 |
定率法は、毎年の未償却残高に一定の償却率を掛ける方法です。以下の計算式を利用します。
減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
ここからは、40万円のパソコン(耐用年数4年)を購入した場合の計算例をご紹介します。
定額法の場合
・1〜3年目:10万円(40万円 × 0.25) ・4年目:9万9,999円(40万円×0.25-1円) |
定率法の場合
・1年目:20万円(40万円×0.500) ・2年目:10万円(20万円×0.500) ・3年目:5万円(10万円×0.500) ・4年目:4万9,999円(帳簿価額1円を残して償却) |
パソコンを減価償却する場合、一定の条件を満たすことで特例制度を活用できます。
取得価額が30万円未満のパソコンは、中小企業者等が青色申告を行う場合、年度内に一括で経費計上できます。ただし、この特例は令和6年(2024年)3月までの時限措置であることに注意が必要です。
取得価額が10万円以上20万円未満のパソコンは、3年間で均等に償却できます。
パソコンを減価償却する場合、いくつか注意点があります。以下で、具体的な内容を確認しておきましょう。
プライベートと事業で兼用するパソコンの場合、事業で使用する割合のみを経費として計上できます。使用割合を適切に記録し、証明できるようにしておくことが必要です。
例えば、一日のうち仕事で使用している時間や、1か月のうち仕事で使用している日数など、合理的に説明できる基準で按分する必要があります。
分割払いでパソコンを購入した場合でも、要件を満たせば少額減価償却資産の特例の適用を受けて一時に計上が可能です。ただし、分割払いには通常、手数料や利息がかかるため、購入費用が割高になる点に注意しなくてはなりません。
未使用のパソコンは減価償却資産として扱われません。減価償却費は購入時ではなく、実際に使用を開始した時点から発生するためです。したがって、未使用のパソコンは、資産勘定の「貯蔵品」として計上します。
中古パソコンの耐用年数は、新品のパソコンとは異なる方法で計算します。耐用年数を経過していないパソコンの場合、以下の計算式で算出可能です。
(耐用年数–経過年数)+(経過年数×20%) |
計算結果は1年未満の端数を切り捨て、2年未満となった場合は2年とします。
20万円未満の修理代は全額を経費として計上できます。ただし、20万円以上の場合は資本的支出として扱われ、減価償却の対象となる可能性があるため注意が必要です。
減価償却の記帳方法には直接法と間接法があります。直接法は減価償却費を固定資産から直接差し引く方法で、間接法は減価償却累計額として別途記録する方法です。
また、消費税の処理については、税込み・税抜きのどちらでも構いませんが、一度選択した方法を継続して使用することが重要です。
パソコンの減価償却は、取得価額や耐用年数に基づき、費用を分割計上する会計処理です。取得価額によって処理方法が異なり、特例制度を活用することで、条件次第で全額を経費計上できる場合もあります。プライベートと事業で兼用する場合は、事業使用分のみが経費対象です。また、未使用のパソコンは減価償却対象外であり、使用開始後に費用計上が可能です。適切な会計処理を行うため、専門家への相談も視野に入れる必要があります。
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