車(社用車)の減価償却とは?耐用年数や償却率、計算方法、購入方法による違いなどを解説

車 減価償却

事業で社用車を利用する場合、減価償却の対象になる場合があります。車を減価償却する場合、耐用年数や償却率、計算方法はもちろん、購入方法によっても会計処理に違いがあるため、事前に把握しておくことが大切です。

ここでは、車(社用車)の減価償却とはどのような会計処理なのか、耐用年数や償却率、計算方法、購入方法による違いなどをご紹介します。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、どのような会計処理なのでしょうか。ここでは、減価償却の基本概念と目的、対象となる資産をご紹介します。

減価償却の基本概念と目的

減価償却とは、固定資産の取得価額を耐用年数に応じて分割し、費用として計上する会計処理方法です。固定資産の価値が時間の経過や使用によって減少していくという考えに基づいています。資産の取得費用を一度に計上するのではなく、その使用期間全体に分散させることで、収益と費用を適切に対応させる、費用収益対応の原則として知られています。

減価償却の主な目的は、企業の財務状況を正確に反映することです。具体的には、適正な期間損益計算を行い、固定資産の取得に要した支出を使用期間にわたって適切に費用配分することで、企業の実際の利益を正確に把握し、適切な税金計算を実現できます。

減価償却により、企業の財務諸表はより現実的で信頼性の高いものとなり、投資家や利害関係者に対して透明性の高い情報を提供できるのがメリットです。

減価償却の対象となる資産

減価償却の対象となる主な資産は、以下のとおりです。

・有形固定資産:建物、機械設備、車両、工具など
・無形固定資産:ソフトウェア、特許権、商標権など
・生物:家畜、果樹など

ただし、土地や美術品など、時間が経過しても価値が減少しない資産は、減価償却の対象外です。

車(社用車)の減価償却とは

車(社用車)は固定資産として扱われ、その取得価額を一度に経費計上するのではなく、耐用年数にわたって徐々に費用化します。車両の使用期間全体で費用を分散させ、より適正な期間損益計算を行うことが目的です。ここからは、車(社用車)の減価償却がどのような会計処理なのかをご紹介します。

法定耐用年数

減価償却を行う際の基準となる法定耐用年数は、車両の種類によって異なります。

・普通自動車:6年
・軽自動車:4年

なお、中古車の場合は、経過年数に応じて耐用年数が調整されるため注意が必要です。

取得価額の範囲

車(社用車)の取得価額には、車両本体価格以外にもさまざまな費用が含まれます。おもな費用は、以下のとおりです。

・車両本体価格 ・カーナビなどの付属品
・オプション費用 ・納車費用 ・登録費用(車庫証明、検査登録手続き代行費用など)

これらの費用を合算した金額が取得価額となり、減価償却の基礎となります。

減価償却の方法と償却率

車(社用車)の減価償却は、以下の2つが一般的です。

・定額法:毎年同じ金額を減価償却する方法
・定率法:初年度に多額の減価償却を行い、年々減価償却費を減らしていく方法

定額法では、毎年同じ金額を減価償却します。普通自動車の耐用年数は6年で、定額法の償却率は0.167です。

定率法では、残存価額に一定の率を掛けて毎年の償却額を計算します。普通自動車(耐用年数6年)の定率法償却率は0.333です。

定額法の計算例

250万円の普通自動車(耐用年数6年)を購入した場合、定額法の計算事例は以下のとおりです。

年間減価償却費=250万円×0.167(定額法の償却率)=417,500円

定率法の計算例

先ほどと同じ250万円の普通自動車を低率法で計算すると、以下のようになります。

1年目:250万円×0.333(定率法の償却率) =832,500円
2年目:(250万円-832,500円)×0.333=555,277円

仕訳処理

減価償却費の仕訳は、直接法と間接法の2種類があります。

・直接法:固定資産から減価償却費を直接差し引く方法
・間接法:減価償却累計額を別途計上する方法

例えば、定額法で417,500円の減価償却を行う場合の仕訳は、以下のとおりです。

直接法

間接法

少額減価償却資産の特例

取得価額が30万円未満の資産に関しては「少額減価償却資産の特例」が適用可能です。以下の条件を満たした場合、取得した年度に全額を経費として計上できます。

・青色申告を行う中小企業者などが対象
・取得価額が30万円未満の減価償却資産
・年間の取得合計額300万円まで適用可能

本特例により、小規模な設備投資の際の会計処理が簡素化され、初年度の経費計上額を増やせる点がメリットです。

車(社用車)の購入方法による減価償却の違い

社用車の取得方法によって、経費計上の方法や会計処理が異なります。取得方法による主な違いは、以下のとおりです。

初期費用現金購入は多額の初期投資が必要だが、リースは初期費用を抑えられる
会計処理現金購入とローン購入は、資産計上と減価償却が必要だが、リースは毎月の経費処理で済む
経費の平準化リースは毎月一定額の経費計上ができるため、経理処理が簡単
所有権購入の場合、会社が所有権を持つが、リースの場合はリース会社に所有権があり
メンテナンスリースの場合、メンテナンス費用がリース料に含まれることが多く、管理が容易
税制上の取り扱い購入の場合は減価償却費を損金算入するが、リースの場合はリース料全額を損金算入できる

車(社用車)の取得方法を選択する際は、これらの違いを考慮し、自社の財務状況や利用目的に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。

現金購入の場合

現金で社用車を購入する場合「車両運搬具」として固定資産に計上し、減価償却を行います。会計処理時の注意点は、以下のとおりです。

・減価償却費を毎年経費として計上
・法定耐用年数に応じて費用を配分(普通自動車は6年、軽自動車は4年)
・定額法または定率法で計算

例えば、300万円の普通自動車を購入した場合の定額法による減価償却費は、以下のとおりです。

年間減価償却費=300万円×0.167(定額法の償却率)= 501,000円

ローン購入の場合

ローンで購入する場合、車両本体は固定資産として計上し、ローン債務は負債として計上します。以下の点に注意して進めましょう。

・車両本体は減価償却を行う
・ローンの支払いは元金と利息に分けて処理
・元金の返済は負債の減少として処理
・利息は支払利息として経費計上

例えば、300万円の車をローンで購入し、月々5万円(うち利息5,000円)を返済する場合の仕訳は以下のとおりです。

初回購入時

毎月の返済時

リースの場合

リースで社用車を導入する場合、毎月のリース料を経費として計上しなくてはなりません。以下のポイントを押さえて、進めます。

・車両は資産計上せず、リース料を全額経費処理
・「支払リース料」や「車両費」などの勘定科目で処理
・メンテナンス費用などもリース料に含まれることが多い

例えば、月々のリース料が5万円の場合の仕訳は、以下のとおりです。

車(社用車)を減価償するときの注意点

車(社用車)を減価償却する場合、いくつかの点に注意しなくてはなりません。以下で具体的な注意点を確認しておきましょう。

年度途中での取得と月割り計算

年度途中で社用車を取得した場合、減価償却費は月割りで計算する必要があります。減価償却の開始月は通常、納車された月が基準です。

例えば、3月決算の企業が7月に社用車を取得した場合、9か月分の減価償却費を計上した場合、月の途中で取得したときでも、その月は1か月分として扱われます。月割り計算により、取得時期によって初年度の減価償却費が変動します。

したがって、決算日を考慮して適切な納車タイミングを選ぶことが重要です。

車(社用車)の売却時

社用車を売却する際は、売却額と帳簿価格の差額に注意が必要です。売却額が帳簿価格を上回る場合、その差額は固定資産売却益として法人税の課税対象となります。

一方、個人事業主の場合は譲渡所得として扱われ、50万円の特別控除が適用されます。ただし、通勤用の自動車として使用していた場合は非課税です。

事業とプライベートで兼用の場合

社用車を業務とプライベートで併用する場合、経費として認められるのは業務で使用した分だけです。この場合は「家事按分」と呼ばれる方法で経費を按分する必要があります。

例えば、業務とプライベートの使用割合が7:3の場合、車にかかった費用の70%のみを経費として計上できます。按分比率の根拠として、業務日報などの記録を保管しておくことが重要です。

任意保険の被保険者

社用車の任意保険契約では、契約者、記名被保険者、車両所有者(または使用者)をすべて同一の法人名義にする必要があります。法人契約の場合、運転者を限定できませんが、年齢条件を設定することは可能です。

また、フリート契約(10台以上)の場合、1台の事故が全体の保険料に影響する可能性があるため注意しなくてはなりません。社用車の事故の際は、業務中か否かに関わらず基本的に企業の保険が適用されますが、従業員の責任が免除されるわけではない点にも注意が必要です。

まとめ

車(社用車)の減価償却は、取得価額を耐用年数に応じて分割し、経費として計上する会計処理です。普通自動車の耐用年数は6年、軽自動車は4年と定められており、定額法や定率法で計算されます。現金購入、ローン購入、リースによって会計処理が異なるため、自社の状況に応じた適切な方法を選ぶことが重要です。また、取得費用の範囲や売却時の処理、業務とプライベートの兼用時の按分など注意点も多いため、税理士に相談するのが得策といえます。

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この記事の著者

ラチーコ

大手会計ソフトメーカーの記事執筆、原稿ディレクション業務を担当しています。

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